特集/座談会

日本のバナキュラーとして

——「非場所」、あるいは「CCハウス」のようなプロトタイプを想定すると、やはり家型になるのでしょうか。日本の伝統建築では、蔵を除けば、家型が強調される妻入りより、平入りのほうが多いかと思います。また、妻を見せる場合には、長野県の本棟造りなどのように、妻面を構えとして装うことも多いのですが、いかがでしょう。

吉村 日本の伝統的な町家などは、壁を共有しながら連続して建てられていたので、平入りのほうが都合がよかったということもあるのでしょうね。後に隣家との共有壁がつくれなくなると、建物が単独で建てられるようになり、隣地間に水を落とせますから、平入りではなく、妻入りで住宅がつくられていくようになったのでしょうか。
島田 確かに、ひしめきあった家型の風景は、そんなに古くはないのかもしれません。心象としての家型も、歴史に沿った流れというより、あるときにつくりあげられたイメージなのでしょうね。
藤村 では、われわれの時代における、ネオバナキュラーとしての家型は、「壁が独立している」ということと、「窓が小さい」ということが成立する条件だったのでしょうか。意外に単純な(笑)。
島田 妻面の構えについてはどうでしょう。家型はいかにも正面なので、方向性がはっきりしてしまいますが、「家の家」ではポジティブにとらえていますか。
藤村 そうですね。周囲の条件を整理すると正面が決まったので、意識的に家型をそちらに向けています。しかも、堂々とシンメトリーに。
島田石切の住居」では、結果的にアイコン風に見えているのですが、構えとしてデザインしたというより、周囲の眺望が魅力的な場所なので、室内からの風景を優先しています。
吉村 オランダの市街地の古い建物は、ほとんど妻勝ちです。妻面が立ち上がって、後ろに屋根が隠れている。これは市街地が低地でフラットな地形で、高い位置から見下ろされないことと関係しているのではないかと思っています。道路からの目線が重視されているんですね。そのための構えです。看板建築ともいえますが。一方、ビルバオは土地の高低差が激しいので、屋根の瓦のパターンで遊んでいます。「グッゲンハイム美術館」(97)がああいった形をしているのも上から見られる視線があると思うと、納得できます。
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