特集4/ケーススタディ

他人以上・家族未満

 住人の職業はバラエティに富んでおり、現在は大学職員、パティシエ、栄養士、心理カウンセラー、医師という顔ぶれで、男女比は1対4とのこと。勤務時間がまちまちなので、食事や入浴の時間もずれており、案外すれ違いの生活だという。土日も、仕事の人もいれば、近畿圏の実家に帰省する人もいるので、ほとんど出払っているそうだ。食事もたまにみんなで材料を買い出しに行き、一緒に食べることもあるが、普段は一人分つくって、めいめいにすませる。
 竹村さんは何か作業をするときも、居間やインナーテラスで行うので、自分の部屋でくつろぐのは寝るときぐらいらしい。
「もし、疲れて帰ってきてほかの人と顔を合わせたくなければ、自分の部屋に直行して、タイミングをずらせばいいことで、そこはあんまりわずらわしいとは思いません。むしろ、人が家にいてくれることで精神的に助けられたことのほうが多いですし。友人同士で一緒に住んでる人も含めたら、同世代でシェアを選ぶ人は珍しくないと思います。家族ではないけれど他人でもない関係性。そういう居心地のよさもあるんじゃないでしょうか」
 お世辞にも気密性がいいとは言いがたい古い木造住宅での、たった6人の共同生活。もっとディープで密な人間関係を想像していたが、生活時間のずれや、適度な住み分けがしやすい共用部のつくりがあいまって、案外、各自が自分のペースでのびのび暮らしているようだ。
 むろん、八清が事前の入居者審査をしっかり行っていることも大きいのだろう。西村さんいわく、「複数の人間が見るとフィルターが変わってしまうので、ひとりの専門スタッフが応対するよう徹底しています」。今のメンバーにうまく溶け込めるか、ルールを守ってくれそうかどうかを、物件案内や前後のやりとりからそれとなく感じとるのだという。
 ゴミ出しは当番制だが、共用部は週1回、近所に住むパートの女性が掃除してくれる。


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