特集4/ケーススタディ

共用部の広さと居心地を優先

「京だんらん 東福寺」はJR奈良線と京阪電鉄の東福寺駅から徒歩5分、表通りから1本入った細い路地のなかほどに立っている。建物は築約80年の木造2階建てを改修したもので、板戸をがらりと開けると、手前は駐輪場を兼ねた広い玄関土間。眼前にはほの暗い町家特有の「うなぎの寝床」の細長い空間が続き、流し台と一体になった食卓のあるダイニングキッチン、ちゃぶ台のある和室の居間、その奥の中庭までが一気に見通せる。
 中庭の脇にはレトロなアームチェアが並んだインナーテラス、中庭から鉄骨の外階段を上った奥には屋上テラスも設けてある。デッキから見下ろすと、敷地のすぐ裏手を京阪電鉄の線路が走っている。2階中央のホールにある共用の水まわりもユニーク。階段を上りきった目の前に、四方から4人同時に使える巨大な水瓶のような円筒形の洗面台が鎮座している。開閉可能な頭上のトップライトから光が降り注ぐ、象徴的な空間だ。
 一方、個室は1階奥に2室、2階に4室の計6室。4畳半に広いロフト付き、6畳に小さめのロフト付きなど、バリエーションがあり、床材もフローリングと畳が各3室。面積は最小限だが、天井が高く開放感がある。
「これまでのシェアハウスは経済性だけをアピールしていましたが、うちはむしろ逆の発想で、付加価値を追求し、個室をたくさんとるよりは共用部分を50%以上とることを売りにしました」と西村さん。魚谷さんも「敷地の奥が線路なので、普通はあちらを個室にはせず、共用の食堂などにすると思います。でも、やっぱりシェアハウスは一番いいところを共用部にすべきだと考え、八清さんもそれを理解してくれて、こういうプランニングになりました」と語る。


>> 「京だんらん 東福寺」の平面図/改装前を見る
>> 「京だんらん 東福寺」の平面図/改装後を見る

  • 前へ
  • 2/5
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら