特集4/ケーススタディ

新しい住の形、新しい保存の形 魚谷繁礼さん ホームページへ

 京都市内だけで約5万軒は現存するといわれる町家。ここ数年、その京町家を改修し、住宅やアトリエ、店舗などに再生し、街並み保存につなげようという動きが盛んになっている。そんななか、新しい試みとして話題を呼んだのが京町家のシェアハウス「京だんらん 東福寺」だ。これまでにも使い道がなくなった古い町家を安い家賃で学生や留学生に貸し出すといった例はあったが、そうしたシェアハウスとは一線を画し、しっかりしたコンセプトをもとに事業計画を立て、予算をかけて構造や断熱まで含めたリノベーションを行い、管理や運営のサポートもセットにした投資家向けの物件として販売した点が特筆に値する。企画開発を行ったのは、これまで200軒以上の京町家を再生・販売した実績を誇る京都の不動産会社、八清。設計は建築家の魚谷繁礼さんが手がけた。
 八清西村直己さんによると、住宅として流通しやすいのは延床面積100㎡以下の小さな町家で、今回の建物のように約150㎡の大型物件になると、費用をかけて改修しても賃貸物件としては収益性が低く、これまで有効利用の決定打がなかったという。魚谷さんも「大きな町家は店舗にする以外、選択肢がなく、いったん大がかりな改装を行うと、その店がつぶれたら使い道がなくなってしまう。へたをすると、町家を店舗として再生することで、保存どころか消費することになりかねないんです」と警鐘を鳴らす。
 その点、シェアハウスなら長く建物が活用でき、収益も見込める。たとえ血はつながっていなくても、大勢が住み継いでいくスタイルは、職住一体の場で大家族が暮らしていた町家本来の姿に近いといえるかもしれない。


>> 「京だんらん 東福寺」の平面図/改装前を見る
>> 「京だんらん 東福寺」の平面図/改装後を見る

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