将来を見据えた
病室レイアウト
設計には災害配慮、自然エネルギーを生かした省エネ対策など、随所に 日建設計ならではの強みが発揮されているが、高層階の病棟のプランのユニークさも見どころのひとつ。平面図を見ればおわかりのとおり、南北の外壁に面した病室エリアが三角形を連続させたような雁行型をしている。設計の塚見さんいわく、これは「細長い廊下が通った通常の病院を横からぎゅーっと圧縮したような形で、コンパクトな中に必要面積を効率的に確保しようと考えた結果です」。このプランによって、通路と病室のあいだに三角形の余白が生まれるため、ここを「ナースピット」と呼ぶ、ナースステーションのサブ的な役割を果たすコーナーに充てており、病室全体を見渡しやすく、きめ細かな目配りができるという。
また、4床室のプランも要注目。通常は4床を田の字型に配するため、窓ぎわと廊下寄りの優劣が生じがちだが、ここでは4台のベッドを開口部に平行に一直線に並べた「ストレート4床室」プランを採用。全床が窓に面し、明るく開放的なうえ、スタッフの動線もスムーズで、廊下からの視線も届きやすい。中央に間仕切りが設けられ、2床ずつにゆるく仕切られており、プライバシーがほどよく保たれているのも好印象だ。
「これから子どもの頃から個室を与えられて育ってきた患者が増えてくると、将来的には個室需要が増えるでしょうから、これなら、さらに区切れば個室化も可能ですし、災害時などには6床に増床することもできます」と渋谷さん。
- *1/BIM(Building Information Modeling)コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューション。また、それにより変化する建築の新しいワークフロー。
- *2/「癒しのトイレ研究会」はTOTOをはじめ、トイレ関連企業5社が主体となり、病院・福祉施設のトイレ空間の向上を目指して2000年に発足、これまで調査研究や学会発表、講演会などを行ってきた。





