最新水まわり物語

第36回

北里大学病院

自然エネルギーと省エネ技術を融合した
最先端病院のホスピタリティ

取材・文/大山直美
写真/川辺明伸

 今年5月7日、北里大学病院(神奈川・相模原市)の新病院が開院した。建物は地上14階、地下1階建てで延べ約10万2000㎡、病床数は757(1号館をふくめ1033)床。屋上にはヘリポートを備え、救急医療や高度医療などの機能をより充実。建築・設備配管などもBIM(*1)で設計されたはじめての病院設計としても注目を集めている。
 今後、隣接する既存病院棟は一部を残して取り壊され、新病院が地域の急性期医療を一手に引き受けることになる。オープン目前の4月、院内を見学したうえで、副院長の渋谷明隆さん、同病院環境整備課課長の座間弘和さん、設計を手がけた 日建設計主管の塚見史郎さんのお三方に話をうかがった。
 既存の病院棟が誕生したのは1971年。その老朽化がきっかけでスタートした新病院建設プロジェクトは、この先、長く使える病院をつくることが命題だった。そのため、はじめは40〜50年先の医療を見きわめようとしたが、「今から20年前には個人が電話を持って歩く、ましてやスマートフォン、つまり個人がコンピュータを持って歩くことなど想像もしなかった。そういう変化が加速度的に起こってくることを考えると、それに見合った病院のあるべき姿など、わかるわけがないと思いました」と語る渋谷さん。そこで、病院の運用というソフト面は5〜10年先を予想しつつ、ハードとしての建物は増改築や改修などに耐えられるフレキシビリティを備えてほしいというのが、設計側への要望だったと振り返る。
 4社によるプロポーザルコンペの結果、選定されたのが 日建設計だが、渋谷さんによれば、事前に4社が設計した自慢の病院を関係者一同で見学してまわったそうで、その印象も審査に際し、少なからず影響があったようだ。
日建さんが設計した病院は確かによくできているなと思いましたし、先方の病院の担当者の対応がよかったのも大きかった。そもそも、見学者が来るというのはわずらわしいことですが、ちゃんと対応していただけるというのは、設計者との関係がうまく行き、現在の建物に満足している証拠ですから」

*1/BIM(Building Information Modeling)コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、コストや仕上げ、管理情報などの属性データを追加した建築物のデータベースを、建築の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューション。また、それにより変化する建築の新しいワークフロー。
*2/「癒しのトイレ研究会」はTOTOをはじめ、トイレ関連企業5社が主体となり、病院・福祉施設のトイレ空間の向上を目指して2000年に発足、これまで調査研究や学会発表、講演会などを行ってきた。


>>「北里大学病院」の12階病棟平面図を見る
>>「北里大学病院」の平面図を見る

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