特集/ケーススタディ1

変わらぬ物語性

 長谷川豪さんの作品を見るとき気づくのは、単なる建築拝見という作業とは異なる感覚で見ている自分だ。それは彼の作品を見るたびにひとつのポイントとして浮かび上がってくる。デビュー作「森のなかの住宅」(06)以来感じる変わらない印象といえる。あいまいではあるけれど、それをある種の物語性といってもいいような気がしている。問題はそれがどこから来るのかという検証だろうか。
「森のなかの住宅」が発表されたとき、自分なりに分析したのを覚えている。まずは写真の表現の美しさもあったのだろう。木々に囲まれた暗い森、光が落ちてきて黒い建築の造形性を際立たせている。純粋な家型、形を強調する黒一色の外観。撮影地点に距離があり、建築のサイズをあいまいにしている。そして、屋根の上に加えられた建築本体に比してやや大きめとも見える、浮いたようなテラス。それは場と形と色彩、加えて微妙なプロポーションの違和感を極限まで詰めて、別次元の物語性を発するところまで作品は昇華されていると感じた。造形力にディテール、突き詰めた集中力から生まれたとしかいいようのないもの。


>> 「経堂の住宅」の屋根詳細図を見る

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