特集/ケーススタディ3

建築は背景として

 外観の主役は庭。建築は背景としての書割にとどまる。幅19m、奥行き9mの整形の庭には、結界としての役割を与えようとしたと宮城さんは言う。現世から聖域へ。そのために水面をつくり、橋を架けて向こう岸に渡る案も検討されたが、熊笹の茂みを渡っていく現状の姿に落ち着いた。
 庭を構成するエレメントは限られている。熊笹の葉と砕石が形成する水平面、象徴的に配された3本の株立ちの山桜と敷地両端の生け垣が形成する鉛直軸。それらを基調に、入り口の段になる石組み、手水鉢、木のデッキ、掘り込みの縁の瓦と石積みが景色をつくっている。エレメントはこれだけだが、豊かな景観である。その理由はさまざまあろうが、なによりも配された石がそれぞれ固有の風合いと存在感をもっているからだろう。整った形ながらやわらかな表情をたたえた延段、その先、いきなり急峻な渓谷の奥深くに踏み込んだような荒々しく豪快な石組み、そして長い時の経過を円やかな石肌に刻み込んだ手水鉢。鮮やか、華やか。
 思うにランドスケープのディテールとは、部分的な納まりにも増して、葉や枝などを含めたエレメントそれぞれのテクスチャーの多様性にあるのではないか。季節や天候の移り変わりがテクスチャーに鋭敏に反映されるので、多様性そのものが揺れ動いてやまない。ランドスケープのディテールの妙味である。


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