
いかにも軽やかな構築物が地上高くに持ち上げられているのならともかく、重厚なボリュームが大地から切り離されて浮かんでいる姿に接すると、意表をつかれ、驚かされることしばしばである。たとえば、本体が強引に地表から持ち上げられている正倉院、二連の入母屋の屋根をもつ本体が丸ごと宙に浮かんでいる吉備津神社本殿。それらと比べると豆粒のように小さいが、やはり浮かんでいるがゆえに驚きをもたらし、その意義を問うてみたくなる建築を訪れる機会があった。
京都、宇治川のほとりにある平等院。東を向き、朝日を迎えるように立っている鳳凰堂の背後は、宇治川の河岸段丘の一段目にあたる崖となっている。その崖の上、鳳凰堂の真後ろに、目指す建築がある。宇治のアトリエ。建築設計は長坂大さん、ランドスケープは宮城俊作さん。宮城さんは施主でもあり、平等院の住職のひとりでもある。
敷地を見るなりすぐに決まったと長坂さんが言うように、建築の配置と構成の方針は素直である。前面道路側に広い庭を配し、その奥に長方形平面の平屋を建てる。庭側(西側)の軒はできる限り低く抑えて圧迫感を減じ、反対側(東側)の軒は高く上げ、室内から鳳凰堂の屋根越しに遠方の山並みを望めるようにする。
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