特集/座談会+ケーススタディ

建築としての性能をどう整えるか

新関 「八雲の家」でのスチール枠をまわした開口部の出し方などは、建て主からの要望はとくになかったと思うのですが、どこから出てきたのですか。
久明 出窓の飛び出した枠は、ここに通風用の小窓を付ける目的と、リビングのソファから外を眺め、奥行き感と開放感をもたせるといった室内側からの要請や機能をそのまま外に出しました。少しとぼけたような表現です。以前は外観を守る気持ちが強く、美学的整合性を意識しすぎてなかなかできなかったのですが、こうしたことをやる勇気が最近では出てきたように思います。ガラスは、出窓全体をソリッドな塊として表現するために、透明な石のように扱い、枠を見せずに構造シールを用いて貼り付けてあります。アルミのフラットバーを裏に使うことも大切で、シールの専門家に強度計算をしてもらったうえで採用しています(北側出窓詳細図参照)、これは「PATIO」にも共通するディテールです。北側のファサードは、斜線制限から出てきた斜めの形を生かしたもので、内部を反映したため対称形ではありません。この形状は早い段階で出てきました。また、2階リビング・ダイニング・キッチンの頂部のトップライトは、暑くならないよう最小限の幅で設けました。そしてスリット上部に少し大きな空気だまりを設けてあります。トップライトからの光でここがあたためられ、立ち上がりにつくった風抜きの換気窓を開けると、ドラフトが生じ、風が上に流れていきます。建築としての性能をどう整えるかは自分たちの大きなテーマのひとつで、ディテールにかかわってくる重要な要素です。
新関 形状や大きさは最初に出てきて、そこにいろんな要請が入ってくることは想定しながら、それらはほぼ受け入れられるだろう、と考えているということですね。
直子 プログラムシートを作成する過程で、部屋に必要な要素や部屋同士の関係性は議論しつくされています。そしてかなりの数の案をつくるのですが、この「八雲の家」でも50案は出しています。
久明 私が修業させていただいた谷口建築設計研究所では、とにかく案をたくさんつくって検討することを教わりました。そのなかで、「汗をかく」方法とそのことの大切さを知りました。エレベーションの検討といえば、「まず100枚」と言われましたから。それは淡々と検討を進めていくうちに見えてくるものがあるということで、多くの場合、後から論理的な筋が浮かんできます。私たちもそのようなアプローチをとっており、こうした姿勢は谷口吉生さんから教わったように思います。


>> 「八雲の家」の北側出窓詳細図を見る
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>> 「八雲の家」の平面図を見る
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