特集/エッセイ

モホイ=ナジによる造形教育「ねじれ」

 材料と技術の研究を主とした基礎的な工作教育を行っていたアルバースに対して、モホイ=ナジは造形の基本的教育を行った。予備課程の教育において、構成、静と動、均衡、空間の見地から学生の造形的な感覚と思考力を涵養することを方針としていた。建築的な立体造形のための基礎訓練として、種々の造形材料を用いて空間を構成させ、その全体を「触覚的」「視覚的」に把握させる課題を行う。これはアルバースの造形教育に比べ、より建築空間的アプローチへと近づいたといえよう。
 モホイ=ナジは身体と空間の諸関係を分析し、三次元的構成を試み、塊から運動へと至る彫塑の発展段階を5段階に分類する。①塊状態、②型式化、③パーフォレーション(穿孔)、④浮遊状態、⑤動的、である。この分析は同時代の同様の西ヨーロッパにおける造形運動に大きな影響を与えただけでなく、バウハウス内の空間概念に具体的な変革を与えるものとなった。彼は造形教育のなかで素材を体験的に把握する方法として「バランスの習作」を数多く制作させた。木や金属、ガラス、鉄線といった最も簡素な素材を用いて、バランスのとれた構成を立てることを求めたのである。ここにおいては、すでに古典的なシンメトリーや静的な姿はなく、動態やプロポーション、緊張度の諸問題が取り上げられ、コントラストの釣り合いや尺度の比率が問題として意識されるようになっていった。23年から25年にかけて制作された「バランスの習作(Kat-Nrn.1-059~061)」においては、素材とともに三次元の空間座標に「ねじれ」が表現され、そこに新たな建築空間の創造の萌芽を読み取ることができる。

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