
アルバースは美術学校を卒業し20年からバウハウスにおいて職人として修業をし、やがて職人から親方へと昇進し教える側にまわった最初の人である。アルバースは、三次元性や運動の流れをいかに表現するかといったことを課題に据え、与えられた材料を徹底的に研究し、構造、形態、色彩のコントラストによる習作を学生たちに描き出させていった。27年頃から30年頃までに制作された、「ヨーゼフ・アルバース」、シャルロッテ・フェーベル(*8)「コンポジション―フォトグラム習作」、フリーダ・ケッシンガー「螺旋、運動のイリュージョン―三次元性のための習作」などからは、フォト・コラージュやフォトグラムなどを駆使しての「ずれ」による三次元性や運動の流れの表現を見出すことができる。
彼の予備課程における演習のなかでもよく知られるのが、紙を折り曲げたり、切ったりして行う素材演習である。作者不詳「空間性の習作―紙の折り曲げ」(28年頃)からは、アルバースが求めていた「可能な限り素材の特性を生かし、無駄なく利用する」ということに応えたうえでの三次元性が表現されていることがわかる。ヴァルター・トラーラウ制作「空間の習作(Kat-Nrn.1-032)」は28年のバウハウス発行の雑誌に掲載されたが、そこにアルバースによって「素材の強度と構成の演習。切りくずを残さずに制作。縦置きの1枚の紙。立体的に折り畳み、ネガとポジの動きのなかでふくらみをつけた作品」と注記が付されている。
アルバースはイッテンに直接学んだが、その教育法を発展させ、さまざまな工夫を加えて独自の教育システムを考案していった。材料を限定し節約することによってその造形的可能性が明瞭に示されると考え、好んで授業において「紙」を用いたことは彼の教育の特徴でもあった。




