どうして中国を拠点としたのか。それは「つくれる」からです。単に仕事の機会が多いというだけではなく、日本とは異なる状況がそこにはあります。物事の決まるスピード。自律した建築の建ち方。プログラムづくりからの参加。プロジェクトの巨大さ。手仕事による表現の可能性。新しさに対する憧憬。そのような状況は建築のあり方を変えると思うのです。 身体から都市のスケールにまで至るそれぞれのプロジェクトにおいて、固有の「主題」を設定しています。それらはデザインを鮮明にするとともに、中国的状況においても負けることのない強い空間や建築をつくり出すためでもあります。 展示空間はインテリアのプロジェクトでデザインした家具類によって構成し、「実現」に絞ったプロジェクトを展示します。アイレベルで各プロジェクトを見てもらうため、模型のグラウンド・レベルを1.3mの高さに設定しました。そこは「主題」が建ちならぶ架空の街が出現します。
かわらない、動かない、そこにいくといつも同じような場所をつくりたい。そういうことを中国で仕事をするようになってから強く考えるようになりました。それは街全体が急速に変化している北京にいて、その勢いに憧れの混じったまぶしさを感じつつも、同時に自分がそこにある種の不安も感じているからかもしれません。この変化のスピードは、利用者だけでなく建築を作る側さえおびやかす強度があり、日々その立脚点を見つめ返させられています。 私は設計者として建築をつくるうえでできることは、せいぜい最小限の変わらないもの、使う人に安心を与えるものを準備することでしかないと思っています。どんなふうに使われてもそれでもそこに残るものをその場所にふさわしい形で定着させる、それが建築に可能なことなのではないでしょうか。ものの定着度を調整することこそが設計という行為なのだと思います。中国でいままで定着させてきた建物、内装を、今回2ヵ月半の定着期間の展覧会という形式で日本に持ってきて紹介させていただきます。