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中庭では北京の現在をリアルに現す映像を見ることができる |
photo : Nacása & Partners Inc. |
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中庭は、二人協働の展示スペースになっている。迫氏の巨大コンプレックスの模型があるかと思うと、一般の北京市民の、激変する都市や建築の状況に関するインタビューがリアルタイムに流されていて興味深い。展示台、ベンチなどは、第2会場の展示台と同様、松原氏による。
第2会場の松原氏の展示は、中央の書店を中心に、いくつかのインテリアの精緻な模型が、あえて同スケール、同仕様で連続して並べられている。スケールとパワーという、いわゆる中国的な期待を裏切り、あえて微妙なニュアンス、空間の違いを楽しんでいる感覚が伝わる展示になっている。中国という環境で、あえて外国人としてではなく、実地に根ざした現実的な視点から、一つひとつのものに固有の解、固有のニュアンスを生み出そうとするアプローチが感じられる。そこにあるもの(今の勢い?)を最大限に利用するというよりは、いかにそこに無いもの(繊細さ、手の良さ?)、実はあるけれど外からは見えにくいものを、じっくりと引き出し、実現できるかというテーマが見え隠れする。
二人展というのは、なかなか足し算以上の効果を作り出すのは難しいものだが、今回の展示も全体として見ると、上下の会場に連続性や相関性といったものは、正直さほど強くは感じられない。各氏それぞれに興味深い展示が独立している。しかし、そこが上手いと思った。実は両氏には、中国に拠点を置いて活動しているという点と年齢以外、大きな共通の方向性があるわけではない、と私は勝手に考えている。中国という場所、文化へのアプローチ、建築へのアプローチ、スタイル、事務所の運営など、どれにおいてもスタンスの異なる、独立した建築家である。そんな別個な二人の建築家が、一つの個展で共存していること自体がまさに現在の中国の縮図であり、そのような企画が成立してしまう、ある種乱暴な側面こそ、日本の建築界の、中国への期待感と不安の大きさの率直な表れだと思える。それらを束ねる唯一の共通性が、展覧会のタイトル通り、全部Realize(事実できてます!)という点だということ、これはやはり凄い。
多様なものをそのまま閉じ込めたようなこの展覧会で、誰もがどこかに抱いている、中国の現実への期待と不安に対する自分なりの答えを確かめることができるのではないか。両氏とも見事に、現状をストレートに展示することを根底に据えてくれていて、変に答えめいたことを提示しようとはしていない。この展覧会は、たまたま同じ場所からテイクオフした二人の建築家の、率直で臨場感に満ちた現状報告であって、両氏とも、自分の今をありのままに見せることが、日本の誰もが興味を持っている、中国の今を伝えるのに最良の方法であることを、よく理解している。 |