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いきいきとした空間をつくりたい。
建築の設計を通して、いきいきとした空間をそこに生きる人たちとともに実践したい。
どんな主体が、そのいきいきとした空間を支えるのだろうか。
どんな建築的想像力が、いきいきとした空間の実践の担い手を引きつけるのだろうか。
戸建て住宅の設計は今、新しい状況を迎えているのではないか。その空間は標準化されたライフスタイルを再生産するものから、個別の家族の、個々人の、生活現象に沿って自在に展開されるものになってきている。その一方でどこに行っても通用することより、それぞれの地域における住居の振る舞いとの対話に知的な楽しみが見いだされている。
グローカル・デタッチド・ハウスはそうした個人化をすすめつつ、場所とのコミュニケーションを指向する複合性の空間である。
公共空間は今、暗いシナリオを抱えていないだろうか。商業空間に飲み込まれ、目的を整理され、監視され、余剰性や可変性や多様性という冗長性を涵養する性質を失いつつある。この状況を打開する一つの道は、身体を用いた空間の実践を通して、それぞれの人の体内に潜む公共性のプログラムを発動させることである。
マイクロ・パブリック・スペース は美術展の枠組みを借りて実現された、囲いのない公共空間の実験である。
新しいいきいきとした空間の担い手は、もしかしたらすぐ隣にいるかもしれない。茅ヶ崎に主婦を中心とした人形サークルがある。30年来の活動で、レパートリーは30を超え、人形は50体を超えるが、専用の劇場や、人形が一同に介する場所はない。それは趣味の一種だが、子供達や老人達を喜ばせる広がりをもつ。
そういう希望が集まったような空間はいきいきとしている。その手作りの温かさ、優しさを台無しにしないように、建築が寄り添うことができたら、その人形劇の空間に力強さが加わるのではないか。
今回新たに制作する人形劇の家は建築の提案を行うことにより、建築の方からいきいきとした空間を実践する主体を探しに行くプロジェクトである。
2006年11月
アトリエ・ワン
塚本由晴氏、貝島桃代氏、両氏が設立したアトリエ・ワンは、「ガエ・ハウス」(2003年)、「花みどり文化センター」(基本構想、設計協力/2005年)、「ハウス&アトリエ・ワン」(2005年)などの建築設計にとどまらず、『メイド・イン・トーキョー』(2001年)や『ペット・アーキテクチャー・ガイドブック』(2001年)の著作に代表される都市サーベイを行い、さらに世界各地の美術展に参加するなど、多様な表現を駆使してユニークな活動を展開しています。
現在、アメリカ、フランス、ドイツ、スイス、ポルトガル、ニュージーランド、中国の7カ国で、グローカルな(地域性も考慮しながらグローバルな視野に立った)6つの戸建住宅プロジェクトと2つの集合住宅プロジェクトの設計が進められています。
一方で、釜山ビエンナーレ2006の「スクール・ホィール」、第27回サンパウロビエンナーレ(2006年)の「モンキー・ウェイ」など、「その場所で起こっている現象を観察し、その生産原理を組み替えることによってこれまでとは違う現象を生産する」実験場としてのマイクロ・パブリック・スペース(囲いのない公共空間)の制作も継続中です。
展覧会では、これら2つの活動に焦点を置きます。ギャラリー・間に持ち込まれるグローカルな戸建住宅プロジェクトと、マイクロ・パブリック・スペースからどんなハプニングが沸き起こるのでしょうか。
双方の展示を通してアトリエ・ワンが主張する「いきいきとした空間の実践」にご期待ください。
”モンキー・ウェイ”
第27回サンパウロビエンナーレ
出展作品(2006年、ブラジル)
”スクール・ホィール”
釜山ビエンナーレ2006出展作品
(2006年、韓国)
ハウス&アトリエ・ワン
(2005年、東京)
ガエ・ハウス(2003年、東京)
写真提供=アトリエ・ワン
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