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無印良品の未来
THE FUTURE AND MUJI
2003 09.13-11.08
デザインの原型
レポーター:河内一泰
「無印良品の位置」と題されたシンポジウムは、現在の無印良品の核となる3人のデザイナーによって行われた。創業時から空間デザインに関わり全体の総括する杉本貴志氏、商品そのものであるプロダクトデザインを担当する深澤直人氏、無印良品と消費者の間のコミュニケーションを担当する原研也氏である。
 
シンポジウム会場写真
満員のシンポジウム会場
Photo=Daichi Ano
青山一号店(杉本氏)
青山一号店(杉本氏)
この40品目から始まった
この40品目から始まった
「World MUJI」(世界のデザイナーに新しい無印良品の提案を求める商品開発)の展開やミラノサローネの出展など、大きな転換期を迎えるなか開催されたシンポジウムは、無印良品の現在の中身について語るというよりは、三者三様の立場から 無印良品における 各自のスタンスが語られ、外堀を埋めるように無印良品の今後についての輪郭が与えられる形となった。

杉本氏は、無印良品は美しさを目指すものではないと言う。青山1号店をはじめとして無印良品の歴史とともに空間デザインを 展開してきた数々の店舗のスライドには、簡素で無骨な空気が一貫して存在している。無垢の木を用いた必要以上に分厚い棚や廃材の利用など、無駄を省くという無印良品のコンセプトとは一見矛盾するような材料があえて挿入される。

オイルショックの反動の中、割れた乾燥しいたけや折れたうどんなど、世間一般の「常識」的な製品イメージを覆すような商品を中心にした40品目から始まった無印良品は、消費社会に対してインパクトを与えた。杉本氏は商品として体裁をなす前のモノがもつ「不格好さ」のなかに無印良品の精神を見いだし、空間に投影してきたのではないだろうか。

深澤氏は自身の活動のテーマでもある「無意識のデザイン」について語った。玄関の床のタイルの目地に傘を立て掛ける ことが日常のふとした行為のなかに溶け込んでいるという事例を挙げ、我々の生活のなかでモノを自覚して使っている場面はごく一部であり、それ以外のモノとは無意識のなかで関わっていると説明する。その膨大な無意識の部分に、モノと人との新しい関係性を発見していくこと。それはデザイナーが「自覚した形を相手の自覚した印象のなかに与えてきたデザインの歴史」(深澤談)の外側にある部分であり、そこにデザインの新しい可能性を感じると言う。
深澤氏は数多くのキーワードと写真を並べながら、非常に具体的に話を進めていった。たとえば、商店街の肉屋さん が手早く肉を包んだ張りのあるシンプルな白い紙 包みは、無印良品ではないけども「ムジらしいもの」を感じると言う。一方で無印良品の商品の中の「ムジらしくないもの」を列挙し、非常に具体的に間違い探しをしていく。無意味についているアール部分、可動収納家具 の足回り、過剰な色や素材について……。深澤氏は日頃より、こと細かにムジらしくないものを調査し、随時 方向 修正をしているとの事。さまざまな商品の形の無駄を排除する ことで固有の商品としての存在は薄まり、意識されない背景となっていく。

原氏は無印良品と我々をコミュニケートする方法として「未知化していくこと」というキーワードを提示した。すでに我々に浸透している無印良品を「未知化」することは、より深く理解することにつながるのだと言う。ギャラリー間にも展示されている地平線のポスターにはキャッチコピーが一切無く、「無印良品」という四文字熟語のみが隅に控えめに添えられている。合理性・シンプル・低価格・ナチュラル・省資源・洗練 等々、さまざまに形容される無印良品。すべての人のイメージを受け止める「何もないけどすべてがある風景」。大きな空の器は作り手と消費者を、また世界と日本をコミュニケートしていく。そうやってお互いに啓発しあう関係のなかで、マーケットの質を高めていきたいと原氏は語った。
タイルの目地と傘の関係は・・・
タイルの目地と傘の関係は・・・
肉屋さんの紙包み
肉屋さんの紙包み
ムジらしくないアール
ムジらしくないアール
地平線のポスター
地平線のポスター

杉本氏はニースのネグレスコホテルの、美しい装飾が剥がれ欠けて現れた無骨で力強い下地を見て感銘を受け、我々は文化の表面しか見ていないのではないかと指摘する。近代において工業化と情報化はデザインをものすごいスピードで社会 に浸透させた。デザインは原形のもっていた背景とは無関係に表面は複製され伝達され、嗜好されるものとして付加価値をもっていく。考えてみれば我々は、そうした膨大な表面の集積のなかで生活しているのかもしれない。
売る店としての演出、デザインの美しさ、一方向に発信される広告……。無印良品は高度資本主義経済のなかで良しとされている 表層をもたない。そのことを通して無印良品は「デザインの原型(オリジナリティ)とは何か?」ということをを我々に問いかけているのではないだろうか。

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