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無印良品の未来
THE FUTURE AND MUJI
2003 09.13-11.08
精神的無印良品
レポーター:河内一泰
無印良品は、1980年に誕生した。日本は戦後の高度経済成長期を経て、なお好景気な時代だった。生活雑貨・衣料品など40品目から始まった商品群は現在5000品目を越え、僕たちの生活に浸透している。今年の春にはミラノサローネにも初めて出展し、海外のデザイン関係者やジャーナリストたちの注目を集めた。世界のデザイナーとのコラボレーションや「MUJI+INFILL」の建築プロジェクトなど、新しい試みもスタートしている。いまや「無印良品(海外での流通ネームは“MUJI”)」は、世界に共有されるコンセプトとして広がっている。建築・デザインの流れのなかで、そのコンセプトがなぜこんなに受け入れられていくのか?その理由を探るべく、僕は展覧会に足を運んだ。
第1会場。無印良品の商品群
第1会場。無印良品の商品群
第一会場パノラマ画像

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第2会場。無印良品が提案する生活空間
第2会場。
無印良品が提案する生活空間
第ニ会場パノラマ画像
会場に入るとまず目にはいるのは、部屋に点在するさまざまな生活雑貨・家電・食品・衣類などである。会場パンフレットにはそれぞれの商品たちのシンプルな説明が記されている。第二会場には、手前に建築家の難波和彦氏、北山恒氏、デザイナーの吉岡徳仁氏による「MUJI+INFILL」の住空間プロジェクトの模型が並んでいる。奥の床にはフローリングが張られ、住宅のショールームのようにバス・リビング・ダイニング・キッチンに見立てた各スペースに浴槽・キッチンカウンター・食器に至るまで、生活空間にまつわる商品がレイアウトされインテリアをつくっている。「さすがにここまで無印良品に囲まれた生活空間というのもなかなか無いな」と思いながら、その空気にひたるべくリビングのソファーに腰を掛ける。

僕たちの生活は、モノによって満たされている。時代とともに生活は多様になり、それに比例してモノも増え続ける。しかし元来、日本人は、物を精神によって豊かにしていく文化をもっている。着物や畳、器などシンプルなフォーマットの中に多様性を見いだし、京都の石庭の無の空間に広がりを発見する視点をもっている。これは、日本人が共有する価値観であり、才能だと言える。無印のデザインは、その精神を受け継いでいる。
形や機能は極端に削ぎ落とされたデザインは、モノによって欲求が完全に満たされることを拒否しているように見える。素材は即物的で、あたかもそれが暫定的な姿であるかのようだ。そうした不完全さが、かえって精神の補完を必要とする余白を生みだしているのではないだろうか。それと同じ意味で、無印良品の商品を買って使うという行為は、物欲だけからくるものではないのかもしれない。過剰なデザインや物質社会に対して満たされない思いを抱いている人たちが、精神的欲求として、もしくは物欲に支配された生活のなかに余白をとりもどす処方箋として、無印良品を使うのかもしれない。

建築やデザインが多かれ少なかれ物質であるという事は、避けられない事実である。モノによって豊かになるか、精神によって豊かになるか。片方では成立しない両者を行き来しながら、我々はモノをつくり、モノと共に生活している。
「MUJI+INFILL」プロジェクト模型
「MUJI+INFILL」プロジェクト模型
中庭にのびる地平線
中庭にのびる地平線
中庭パノラマ画像

撮影=ナカサ・アンド・パートナーズ
パノラマ画像撮影=コムデザイン
建築のかかえている背景もまた、同じだ。今回の「MUJI+INFILL」の各建築家の提案にも、余白をつくる建築のあり方が示されている。吉岡徳仁氏は、壁の後ろ一面にキッチンや書斎として使えるサブヤードを隠し、その時使う部分以外のものを隠蔽することで余白をつくっている。北山恒氏は、RCリブ付き壁構造という倉庫に使われるシンプルで単調なRCのスケルトン用意した。同モジュールの空間の連続体は中身の機能の入れ替えが可能であり、何か特定の目的のために用意された固有のかたちではないという意味で、常に余白を含んだ空間を想定している。難波和彦氏は、長年にわたって実践してきた「箱の家」の発展型を提案している。素材や工法をシンプルにした一室空間は、間仕切壁をもたない。個々のスペースが、完結せずにゆるやかにつながっている。

会場中央に中庭を横断して展示された大きな写真には、地平線に向かって立つ一人の人間が写っている。どこまでも続いていく天と地が物質と精神という背中あわせの価値観を表しているとするならば、それを見つめ突き抜けていく視線は、大らかに向こう側へとつながっている。世界に広がっていく無印良品の未来にどのような地平が見えるのか、今後が楽しみである。
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