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レポーター:美濃部幸郎 |
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白いスライドとクールな説明が起伏なく続く、約2時間の講演であった。
講演の内容は、ギャラリー・間で7月26日まで開催されている「SANAA展」に展示されているプロジェクトのうち6作品に実施2作品を加えた8作品を2機のスライドで紹介するもので、妹島氏と西沢氏が交互に説明するスタイルで行われた。両氏ともに建築を言葉で表現するタイプの建築家ではないから予想はしていたものの、その抑揚のない語り方に近年のSANAAの建築作品にも感じられる、なにかが欠落した印象を受けた。
「SANAA展」も淡泊だ。進行中のプロジェクトを大きな模型で表現した展示は、手足の細い10等身ほどの特徴的なひと模型に以前のポップな演出の面影があるのみで、木は写真をスキャンしたもの、模型の他の部分はすべて白いために色のメリハリもなく、脚色を削いでクールだった。この脚色やメリハリのなさにも、近年の作品との連動を感じた。
おそらくそれは、建築としての存在よりも、そこに存在する物の物理的現象や人の視覚に捉えられる知覚現象、あるいは建物を使用する人びとの活動による現象といった、現象自体に優位を与えるために、建築を構築するさまざまな水準や物が欠如したおぼろげな建築といえる。
こうした「何かが欠如した建築」は、講演の冒頭で示されたスペインの「バレンシア近代美術館増築」に顕著に感じられた。この計画は、旧・新市街の境界に建つ20,000㎡の美術館に10,000㎡のギャラリー・収蔵庫・カフェや彫刻広場などのパブリックスペースを増築するという与条件に対して、有孔板で作られた高さ35m(建物の倍の高さ)、平面90m角の直方体(特に「SKIN」と呼ばれている)で既存建物を覆うというものである。増築部分は既存部分とSKINの間に、事後的に見いだされている。
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講演風景 |
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「バレンシア近代美術館」の
遠景コラージュ |
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