邑楽町を含めた一連の公共建築のプロジェクトをとおして、山本氏は一貫して「どのようにエンドユーザーと問題を共有しながら自分の建築をつくっていこうとしているか」のプロセスを丁寧に説明した。それを聞きながら私は、建築家の役割として「建築を提案する」ことと同時に「提案した建築を扱う」ことがとても重要になってきていることを強く感じた。
ただ、説明を丁寧にすればするほど、山本氏が考えている「建築家の主体性」が伝わりにくくなっている側面も感じられた。
ユーザー参加を謳い文句にすると、建築の評価の指標がいわゆる「顧客満足度」になってしまう危険性がある。一方で、建築を提案するのも最終的に扱うのも建築家の責任であり役割である、と明快に言い切ってしまうと「明確な提案=作家的な振舞い」と取られかねない、という側面も併せもつ。いつまでもその狭間で足踏みしたくないという強い意志が、丁寧に説明する山本氏の言葉の中に窺えた。 |