
選択された
本棟造の
特徴
この理由について、マチデザインは次のように話してくれた。まず、そもそも本棟造を意識したのは、かつてあった主屋をはじめ、この地域一帯に本棟造の民家が点在しているため。しかし、文化財として残されている本棟造というよりは、むしろ現在までこの地で変化しながら生きてきた本棟造の姿を思い浮かべ、全体の気分として取り入れたのだという。全体の気分というのが、緩勾配の切妻屋根と、大きな梁間である。雀おどしなどは付けなかった。
確かにその選択は正しかったと思う。雀おどしのなかには破風板を棟部分で止めずにそのまま高く延ばし、ばってんの形をつくっただけの簡素なものがある。これが、雀おどしの起源だ、と言う人もいる。板葺き屋根においては、螻羽(けらば)(妻側の屋根端部)に葺いた板が風で飛ばないよう、破風板を屋根面より高い位置に取り付けるのが普通であった。しかし、この住宅を見てわかるように、板葺きでなければ破風板は屋根面より下に付くのが普通だろう。もしこの状態で破風板でばってんの形をつくれば、屋根の端を突き破ってしまう。そう考えると、棟飾りは必ずしも雀おどしでなくてもよい気がする。また、きびしい寒さから中央1室を守るような2列6室の間取りも、室内環境が向上した今日、その必要性を感じないし、かつて馬を飼った土間が屋外に出て駐車場になっているのもうなずける。
こうしてかつての本棟造の姿を想像しつつ、この「本棟の家」に素材や技術などの大きな変化を認めると、それでも採用されたゆるい切妻屋根や大きな梁間といった特徴には、現代的な有用性や設計者のこだわりを感じずにはいられない。
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