
もうひとつの
背景
初心の書籍
光嶋さんの最初の著書『みんなの家。〜建築家一年生の初仕事』(アルテスパブリッシング)。
ベルリンから帰国後、偶然の機会から思想家であり合気道師範である内田樹(たつる)氏から住宅兼道場の設計依頼を受け、「凱風館」(2011)を完成させるまでの道のりを記した本である。施主である内田氏を筆頭に、京都・美山町の林業家、構造設計の大家、左官のベテラン、カメラマンから転身したカワラマン(瓦生産者)、手練れのテキスタイルデザイナー、能舞台の背景を描く画伯、岐阜で檜の山を守りながら自然素材を使った家づくりを続ける中島工務店ほか、それぞれがきわめてユニークな個性の人々が次々に登場し、めまいがするような奔流となって突き進む様子が活写されている。「みんなの家」とは単に使用者や関係者が多いというのではなく、企画、設計から施工を通した親密なネットワーク論であり、創作の方法論なのである。
この点は「如風庵」にも継承されている。施工者の中島工務店は変わらず、そこに左官の久住有生さんなどの新しいメンバーが加わって柔軟なチームワークが形成されている。それが効率よく機能するのは、光嶋さんの天性の朗らかさと異文化を渡り歩いて体得したコミュニケーション能力によるのだろう。
>> 「如風庵」の平面図を見る
>> 「如風庵」の南北断面図を見る
>> 「如風庵」の東西断面図を見る





