
施工でも、試論は続く
構造の実現に目途は立ったが、その特注ボックス梁の製作を引き受けてくれる業者はなかなか見つからず、現場での施工も困難をきわめた。すべてが露出し、逃げが許されない複雑なデザインを全溶接で組み上げねばならず、通常の鉄骨造なら4㎜以内に納まるはずの誤差が当初は25㎜にも達し、微調整を繰り返して修正するのに2カ月半かかったとのこと。
一方、柄沢さんはこの建築にふさわしいディテールを追求すべく、屋上テラスの出入り口となる引戸、洗面台、ポストなど、あらゆるものをオリジナルでデザインした。実施図面は約130枚におよんだという。
設計期間1年5カ月、施工期間1年1カ月という時間が苦労のほどを物語っている。ネットワーク型建築を実現するという、唯一ともいえる与件に対し、一歩も退かず格闘したさまざまな過程こそが、このプロジェクトの「試論」だと柄沢さんは振り返る。
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