特集1/プロセススタディ

試論2 
玄関と食堂と居間が一直線に

 契約が結ばれ、設計が本格的にスタートしたのが09年11月。
 可能なバリエーションのすべてを追うように、平面、断面の検討が繰り返された。次元の違う複数の条件を整理しながら、まだ見ぬ新しい姿を求めていく作業は、数式を解いて唯一の正解にたどり着くようなプロセスとは異なる。ロボットに山ほどの前例を詰め込み、性能の最適値を導く演算システムを可能な限り組み込んだとしても、住みやすく美しい空間に行き着くことはできない。そこではつくり手の絶えざる創造的な動機と精妙な感性が欠かせないからである。
 第2案は先の骨格を守りつつ、いくつかの変更があった。最も大きな変更は中央の主空間の扱い。第1案では正面中央の玄関を入り、居間・食堂へつながる主空間が雁行して公園方向に次第に開けていくようになっていた。一度に先まで見通せないようにして奥行き感をもたせ、天井高さを徐徐に高めるなどして、空間に抑揚をつけようとしていたのである。第2案では車庫を取り込むことになったこともあって、よりシンプルな構成とする必要があり、玄関、食堂、居間が一直線に連なる天井の高い東西軸が出現し、両側の天井高の低い諸室と明快な対比が生み出されている。奥行き感が薄まらないように、壁で仕切られた空間が層状に連なっていく構成。終着点まであと一歩だ。


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