特集1/プロセススタディ

試論3から定着へ

 第3案。ほぼ最終形。和室(客間)が軸線に組み込まれ、土間の玄関から和室、作業コーナー、食堂、居間が直線的に並び、そのあいだのガラス格子戸、障子、襖障子、ガラス戸を開閉することで、プライバシー、視線、空間の広がりが制御される。鴨居、欄間の縦格子、居間の上部の大きな高窓、玄関と作業コーナー上部の小さな高窓などによって、空間に微妙な陰翳、穏やかな躍動がもたらされている。
 隣接する家屋の影すら見えない静謐(せいひつ)な居間。家事室が付属する台所、庭を望む浴室、登り庭に面した半戸外のテラスなど、適度に独立した使い勝手がよい場所がそこここに用意されている。全体にわたってご夫妻の満足度はきわめて高いと見受けられた。
 ご主人は、庭の植栽や池のメンテナンスはもちろん、テラスに設置するテーブルとベンチや屋上に上るはしごを自作するなど、持ち前の器用さとセンスを発揮して、生活を目いっぱい楽しんでいる。
 こうしてみると「富士宮の家」の理想的な設計プロセスは、建主の十分なゆとりをもった建設計画、過不足がない要望、設計図から建築模型を組み立てたという熱意、トライアルプランを利用した相互理解、ニーズを深く汲み取って具体化する設計者の能力、広範な検討を重ねつつタイミングよく案を提示するマネージメントなど、さまざまな要因が一体となって生まれた必然と思われた。


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