
ホームページの「申込書」で
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2007年、ご夫妻は定年後の住まいを建てるために、土地勘のある地区をまわり、格好の敷地を探し当てた。ゆるやかな南傾斜、東は緑豊かな公園に接する閑静な分譲住宅地。北東に富士山、西には天守山地の山並みを遠く望む。第一種住居専用地域。敷地面積約444㎡。完成の目標は11年末。環境はのびのび、工程はゆったり、せせこましいところがない。
08年2月、雑誌にイメージにぴったりの住宅「山陰の家」(07)を見つけた。その設計者であるCDSに連絡をとり、オープンスタジオに参加したのが7月、少し間をおいて翌1月、CDSの「トライアルプラン」に申し込んだ。
「トライアルプラン」とは建主と設計者のお見合いのようなもの。設計を希望する人がCDSのホームページ上の「申込書」に必要事項を記載して送信、それを受けたCDSが建主と打ち合わせの場を設け、その後に概略の案を提示する。双方が了解すれば、そこで初めて契約を結んで設計をスタートさせる仕組みである。
建主のご夫妻の申込書が残っている。全体イメージは「シンプルで、モダンで落ち着きがあり、終日いても飽きない家。公園の緑、北東の富士山、西の夕焼けを眺められる家」。そのほかに「中庭が見える玄関。アイランド型のキッチン。その脇に食品庫。外を眺められる浴室。雨に濡れずに中に入れる車庫。簡単な作業部屋。来客が泊まれる部屋」などが付け加えられている。簡潔だが、そのじつ、全体を貫く住まいのイメージにブレがなく、暮らし方の具体像が必要十分に示されている。ありがちな、予算に合わない過大なニーズ、住み手のあいだでの意見の食い違い。そういったものは、かけらほども見当たらない。
申込書はその後のプロセスで絶えず参照され、結果としてもそこに記載された内容からはずれたところはひとつとしてない。
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