特集1/プロセススタディ

繰り返す修正から洗練へ

作品/「富士宮の家
設計/横田典雄+川村紀子

玄関から客間・食堂・居間が一直線に連なる住宅。 初期案で大枠の方向性が決まりながら、 可能なバリエーションをすべて追うように、検討が繰り返され、洗練されていった。

取材・文/伊藤公文
写真/川辺明伸

建築設計は修正主義

 オーダーメイド。注文主がオーダーし、それに応じて受け手が案を練り、つくり手が製品を完成させる。受け手とつくり手は同一であることも別であることもある。家具、器、衣服、料理、アートほか、オーダーメイド方式はいくらもあり、建築もそれに含まれる。
 たとえば家具のようにオーダーの段階で最終形が明確である場合もあれば、料理のように概略のオーダーが発せられて以降はつくり手が自由に腕を振るう場合もある。前者であれば注文主が「正解」を指定し、後者であればつくり手がひとりで「正解」を探り出す。しかし商品化住宅を除いて、建築の設計の場合は事情が違う。最初から「正解」が明らかであることはないし、設計者がひとりで「正解」に行き着くこともない。注文主が要望を出し、設計者が案をつくる。両者が応答を繰り返し、修正を続けた果てに、完成形がおぼろげに現れる。そこからさらに詳細に踏み込んで応答が続けられる。それが通常だ。教育の分野で「正解主義」から「修正主義」への転換がいわれているが、建築設計の場合はまさにそれに当たる。コミュニケーションによる修正なくして設計は収束しない。建築設計の楽しさ、難しさは、すべてそこに起因する。だからこそ設計者は誰しもが、スムーズで効率よい設計プロセスを探って止まない。
 ここにひとつの理想的なケースがある。「富士宮の家」。建主はご夫妻おふたり、設計者はCASE DESIGN STUDIO(横田典雄さんと川村紀子さん、以下CDSと略記)。両者のやりとりを通して、何がどのように円滑な進行に寄与したかをみてみよう。


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