自邸「礫明」とこれから
——自邸「礫明(れきみょう)」は琢磨さんとの共同設計ですが、ふたりの興味、関心が混じり合っているのでしょうか。
- 川口 そうです。どちらかひとりが担当したら、絶対に今の姿にはならなかったでしょう。発想は琢磨、納まりや素材は私が主となりましたが、あくまでも思考、技術、知識を相互に補完しあい、融合した結果です。
——年代の差は乗り越えられるものですか。
- 川口 意見を異にすることはよくありますが、それを刺激としてさらに一歩進んだ局面に立つという感じでしょうか。屋根勾配ひとつとっても、白井晟一の「呉羽の舎」(65)の2.2寸勾配が理想だと私が言えば、琢磨はズントーの「聖ベネディクト教会」(89)は2寸勾配で美しいと言う。そこから検討していって解決点を見出していく。そういう過程をたどるのは、創作活動として望ましいし、楽しいと私は思っています。
——これから先の方向はどう考えていますか。
- 川口 同年代の人のなかには俺は折り返し点だという人もいますが、私は違う。折り返しているひまはない、さらに突っ込んで行こうという気持ちです。その都度、自分としては完成形と思えた地点にたどり着くけれど、それが到達点ではない。さらに先に行こう、さらに自由を獲得したいと思っています。独学の強みでしょうか。
>>「映水庵」
>>「礫明 第一期」の図面を見る