特集3/独学の建築家

町家の改修から学ぶ

——では、独立して設計を始めたのは、どういう経緯だったのですか。

森田 4年、5年と修業をするうち、文化財の現場では左官技術が本来もっている技術の可能性が十分生かされていないことを痛感しました。たとえば鎌倉時代と江戸時代の建物を比較してみると、技術はどんどん変化していることがわかる。でも文化財は昔どおりに復元するのが仕事ですから、そこにとどまることを強いられる。左官で学んだことを現代建築の設計の分野で生かしたいと思うようになりました。

——その場合、設計事務所に勤めて、設計を勉強してから独立を考えるのが一般的だと思うのですが……。

森田 設計をテクニックとして学んでしまうことへの恐れもあり、それは考えませんでした。学生のときに布野先生に教わろうと思ったのも、設計について学ぶより先に、すでに世界に存在している建築についてしっかり学びたいと思ったからです。
 それと独立して最初の仕事が「Mayu」(2000)という町家改修でした。文化財の現場をずっと見ていたので、木造建築の修復には自信がありました。ですから、図面の描き方も、見積りのとり方も、わからないことだらけでしたが、その仕事で少しずつ設計の実務を覚えていくことができました。

——独立して設計者になられた後も、左官として自作に参加されているようですが……。

森田 今は基本的に職人さんにお願いしています。目指すものがはっきり伝えられるときは、毎日仕事をしている人のほうが効率がいいし、上手です。ただ、誰もやっていないこととか自分でもよくわからないことをやるときは、人にお願いできない(笑)。自分でやれば、その場ですぐに対応できますしね。


>> 「Mayu」
>> 「Concrete-pod」
>> 「御所西の町家」(改修)の図面を見る

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