自分の家のように
リラックスできて
愛着がもてる空間
水まわりについても、ほっとひと息つけるスペースが求められたが、賃貸面積はできるだけ広く確保したいため、共用部分は最低限の面積で計画する必要があった。しかも、東急不動産では折しも、本社の社員用トイレに試験的にさまざまな水栓金具や照明や鏡などを取り付け、とくに女子社員が求める機能についてアンケート調査を実施しており、そうした声を反映させることになった。つまり、限られたスペースでも、リラックスでき、かつ機能も充実したトイレが求められたわけだ。
設計側が重視したのは眺めと光。男女とも開口部を設けて景色と自然光を取り入れた。とくに六本木側に面した女子トイレには横長のスリット状の窓があり、東京タワーや六本木ヒルズなど、切り取られた東京の街並みが一望できる。大開口をあけるよりむしろ、記憶に残るシーンをつくりたかった、と坂本さん。
開口部から入る自然光は、随所に配した鏡の効果もあって、うまくバウンドし、室内全体を明るく白い光で満たしている。一方、夕方になると、色温度の低い照明のあかりが夜の雰囲気を醸し出す。さらに、11階のトイレでは、女子トイレのブース内とパウダーコーナーに有機EL照明を採用。まぶしくない自然な光で心地よい空間を演出している。
本社での調査で多かった要望のうち、反映させたのは、水と湯を切り替えられる水栓金具の採用と、書類置き用の棚の確保などだ。基準階は機能性を重視した湯水切替の自動水栓を採用しているが、最上階だけはデザイン性を重視して手動式を選んだという。
「ホテルなどでは意匠性の高い手動式が選ばれていて、むしろ別のぜいたくさがある。自動水栓は、水は最小限でいいから早く働いてください、みたいな感じがしなくもないですよね(笑)。リラックスできる場をつくるには、機能性に加えて、時間軸でみたときの豊かさや、自分の家のように使えることが大切なのではないでしょうか」と坂本さんは言う。
また、書類置き用の棚は洗面台の下にさりげなく設置。A4の書類を入れてもすべり落ちないよう、微妙な角度や立ち上がりをつけ、工事業者と配管との取りあいについてやりとりを重ねるなど、苦労の賜物だそうだ。
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