個性的なファサードが特徴
バルコニーを付加価値にした
これからのオフィスビル
今年2月、東京・南青山に今までありそうでなかった中規模オフィスビルが誕生した。青山通りに面した11階建ての「新青山東急ビル」は、1〜2階が店舗、3階以上が賃貸オフィスという構成だが、9層のオフィス階の道路側と反対側の両面に、各テナントが自由に使えるバルコニーが付いているのだ。大小の格子をランダムに組んだ青山通り側のファサードからはどこにバルコニーがあるのかわかりづらいが、よく見ると格子の一部は横一列に連続してガラス張りになっており、それが各階のバルコニーの手すりを兼ねている。
バルコニーは容積率に参入されない奥行き2m以下に設定し、テナントには無償で提供しており、いわば付加価値として設けた空間だが、賃料は近隣の相場より1割ほど高いとのこと。それでも竣工早々に満室稼動になったというから、それだけ閉じたオフィスとは一線を画した開放的な空間に魅力を感じるテナントが確実に存在したということだろう。
ちなみに、最上階の11階はほかの階より天井高も高く、意匠性を高めた特別仕様のスペース。バルコニーも奥行き5.8mあり、オフィスの延長として使えるぜいたくな半屋外空間だ。
東急不動産の上野直人さんによれば、3年前に目黒につくったオフィスビルにおいて、斜線制限で階段状の部分が生じたことから、テナントが自由に使えるルーフテラスを設けたところ、これが好評だったという。
「東日本大震災後、節電でエアコンの使用を控えるテナントが増え、外気が入らないことがストレスになるというワーカーの声が聞こえてきました。閉じた空間で空調を調えることが本当にいいのかあらためて考えなおし、次のビルでは開けられる窓を第一に考えたいということが根底にありました」
こうした要望に対し、設計を手がけた日建設計が提案したのが、バルコニー付きのプランだった。同社の坂本隆之さんはこう語る。
「ふつうは働く場所と共用部分は分断されていますが、ここではバルコニーなどの共用部分をワークプレイスを囲むように配置し、働く場所と密接に関係させました。ただ自分の席で話しているだけではなく、外に出て一服して会話しているときに新しい発想が得られたりする。そういう場があることが働きやすさにつながるのではと考えたんです」
バルコニー案が採用されたこと自体、英断だったといえるのではないか。管理側からすれば、人の転落や物の落下など懸念はつきないからだ。着工後、現場にファサードのモックアップをつくり、手すり部分の高さや形状について検討を重ねることで、安全で心地よいバルコニーを実現させたという。
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