ケーススタディ05

浮遊する床

 こうした1階の床と対照的に、2階・ロフトの床は軽やかに吹抜けに浮かぶ。分割してさまざまなレベルに置かれ、上下面、つまり床面と天井面、そして木口までがシナ合板・染色塗装で同一の仕上げが施される。床というより抽象的なオブジェのようだ。
 かつて篠崎さんが伊東豊雄建築設計事務所に入所したのは、「せんだいメディアテーク」(2000)の竣工直後にあたる。軽やかなチューブで支えられ、鉄板でサンドイッチされた床の存在感に強烈な刺激を受けたそうだ。また同時に伊東氏の建築は「ゲント市文化フォーラム」(04)、「台中メトロポリタン・オペラハウス」(建設中)など、自在に傾斜した床へと向かいはじめる。事務所に在籍した7年間、床についてつねに意識していたと篠崎さんは言う。その最終的な結論は、床の水平性はやはり重要であるというものだった。
 そして水平な床によるもっと自由な展開を考えるうちに、架構を建物全体に張り巡らせ、好きなところに居どころをつくるという発想が生まれていく。「メディアテーク」の床とチューブとの関係を逆転させたようなビジョンだ。つまり前作「House T」(12)にも見られるように、柱梁による架構体から分離して床をつくること。鉄筋コンクリート造では梁と床スラブは一体となって強度を得るが、在来木造では必ずしも梁が直接に床を支える必要はない。


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