ケーススタディ04

開放的な家型

 敷地は奈良・東大寺の境内に接している。その昔は境内に含まれていて、工事に先立ち文化庁の発掘調査が行われた。春日山風致地区であり、市街化調整区域でもある。条例により、配置、容積、外形の素材、形状、色彩などに規制がある。防火指定免除という特典もある。
 屋根の形状は切妻、方形、寄棟のどれかでなければならず、片流れは許されない。幅6m、奥行き30mの敷地形状から、切妻の選択が妥当だった。勾配は急すぎてもゆるすぎてもダメ。いわゆる家型に必然的に誘導される。
「33年目の家」の外形もまさに家型そのものなのだが、条例が想定しているだろうバナキュラーな姿とは天地ほど異なっている。構造は5mワンスパンの鉄骨の家型フレームが3.85mおきに7列並び立ち、桁行方向は軒梁とブレースからなっている。構造体はすべて露出している。屋根は波型ガルバリウム鋼板とチタン亜鉛合金のエキスパンドメタル、壁も同じ材料のほか、中空ポリカーボネイトが多用されている。屋根も壁も一部は張られていない。落ち着いたたたずまいの瓦屋根と白壁の外形が期待されているとすれば、「33年目の家」の家型の外形はその対極にある。堅固な閉じたシェルターではなく、薄く、軽く、開放的。設計者の一人である有山宙さんが傾倒するオーストラリアの建築家グレン・マーカットの影が認められる。さらには、ひらひらと華奢で浮遊感があり、もしかすると工事中ではと受け止められかねない未完成感すら漂わせている。

>>「33年目の家」の平面図を見る
>>「33年目の家」の断面詳細図を見る

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