特集3/対談

描くおもしろさから始める

——竹原さんは大阪市立大学で長く教えられていましたが、大学で教えることと、事務所で教えることの違いはありますか。

竹原 学生のときには、もののつくられ方の仕組みとか、その建築がどうして建ち上がっているのかという話をする。現物を見たり、図面を読み込むことが重要です。写真と図面をもとに模型をつくれるようにするとかね。どんどん手を動かしていくと、いろんなものが膨れあがっていく。
 それから学生には、手で描いたスケッチを全部、絵手紙として出してもらう。就職のプレゼンにはそれをファイリングして使うんです。見るとちょっとびっくりしますよ。
矢田 その絵手紙はスケッチと自分の感じたことが描いてあるので、どういう学生なのかがよくわかります。
竹原 僕の授業は、いつも30〜40分前に行って、黒板にびっしりと絵を描きます。学生にそれをやらせると、線がまっすぐに引けなかったり、スケール感がわからなかったりする。でもそのうちに、「50分の1の縮尺で1m」と言われたら、何も見なくてもその長さが描けるようになる。それが授業ですよね。描くおもしろさを学生に教えるんです。
 事務所はまた違って、僕が「何々がさあ」と言うと、パッと本を探してきて、「これでしょ」とすぐに出してくる。僕が普段、何を見ているか、今何を思考しているかを知っている。そうすると共通するもののなかから新しいものが生まれてくる。事務所では会話が続くことが重要です。

——竹原さんの事務所のスタッフ、OBのつながりはいかがですか。

矢田 基本的に仲はよいと思います。みんな建築がすごく好きで、朴訥でまじめな人ばかりです。事務所の頃もOBになっても、わからないことがあると言えば、すぐにサポートしてくれる。
竹原 それは石井事務所の人たちも同じですね。
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