特集3/対談

師の考えていることを考える

——矢田さんが独立した経緯はいかがですか。

矢田 竹原さんのところで一定期間、修業をさせてもらったら、それをちゃんと次の後輩にバトンタッチして、教えてサポートする。ある程度、恩返しができたら……、できてないと思うんですが(笑)、それから出ようと。またスタッフとしてやっていくうちに、自分はこうやりたいという部分もみえてきますね。
竹原 建築は奥が深いから何年で独立できるとはいえません。それからひとつの住宅をつくるのに、計画を始めてから最後に住んでいる人の様子を見に行くまで、最低3〜4年なので、ある程度は長くかかります。

——ひとりがひとつの作品を担当するんですね。

竹原 そう、ひとりで全部やらせるので、うちで仕事をすると完全に独立できるようになります。大工さんの追加工事から、クライアントに設計料を払ってもらうところまで、すべてわかる。自分が何回現場に行って、いくら交通費を使い、構造事務所にこれだけ払ってと。そして、自分の好きなことをやって利益の薄い仕事をしていることがわかると、何も言わなくてもほかのスタッフの仕事を手伝うようになるんです。

——スタッフによるデザインはどのくらいまで許容されるんですか。

竹原 僕が石井事務所のスタッフだったときは、「先生はこう考えるだろうなあ」といつも考えていた。だから、今スタッフに求めるのは、僕が考えていることを、ちゃんと考えておけよということです。でも、不思議と同じようなことを考えているんですね。まあ、全然違うことを考えるなら、うちにいなくてもいいんじゃないのと。アトリエ事務所では、親分が全部描いてスタッフに渡すこともできますが、やはり両者が戦わないとおもしろくない。それがデザインですよね。描いてきたものを、「いいねえ」と言うこともあれば、「違う」と言うこともあります。
矢田 打ち合わせをしていくうちに、竹原さんの口からポロッとイメージが出てくることがある。そうすると、ここにこういう感じの光を入れたらいいのかなあとか想像します。
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