——スタッフ時代の矢田さんはいかがでした。
- 竹原 ご両親が商売をしていたのは強みですよね。「おはようございます」「ありがとう」という挨拶がちゃんとできる。それはあたりまえだけど一番重要なんです。スタッフには「偉そうにするな」とつねに言っている。職人さんにちゃんと挨拶をして手伝いをしていれば、「ここを直せ」とかではなく、「これ、どうですかねえ」「どうしましょうか」という会話ができる。ものづくりをしている人間に、それからクライアントに、よい家ができそうだと思わせなきゃいけない。だから大工さんはうちのスタッフに、すごくいろんなことを教えてくれるんです。現場で話を聞いて結論を出すという練習をしているわけですね。
それから矢田君は、どういう具合にお金が動いているかがわかっていた。この仕事は金額が大きいし、住宅ではクライアントがいくらお金をもっているかにまで踏み込まなければならない。彼にはそういうことを任せられるなと。
- 矢田 僕の実家は化粧品の販売と美容室をしていました。だから家に帰るとそこは店なので、「ただいま」ではなくて「いらっしゃいませ」なんです。それから、お客さんがいるのでうちは成り立っているというのは、すごくよくわかっていました。美容室に来る人を見ていたし、パーマした人、カットした人、ブローした人を毎晩帳面で全部チェックして、季節や曜日による増減を知っていた。小さい頃から社会的なつながり方は見ていたので、そういうのは僕にとって大きなことだったかもしれません。