特集3/対談

多くのものを見て経験を積む

——では22年前に時間を戻して、竹原さんと矢田さんの出会いを聞かせてください。

竹原 彼の先生である神戸大学の重村力さんから電話がかかってきて、「普通の会社では、たぶんよさの出ない学生がいるんだけど、彼のよさを引き上げてくれるのは……」とか、うまいことを言われまして(笑)。それで卒業式の直前に面接をしたんです。そうしたら、すごい格好で来た。
矢田 金髪に、破れたジージャンで。何かを狙っていたわけではないんですが、「僕はこうなんだから、いいでしょ」って感じです。社会をわかっていない。竹原さんに怒られました。「クライアントは一生かかって払うお金を、君に任せるんだ。逆の立場だったら、任せられるか」と。対外的には僕が竹原さんの顔になるわけですからね。それで次の日は髪の毛を染め直して、一応きれいな格好にしました。
竹原 でも話をすると、ものを見る視点が鋭くて魅力があった。この子はいっぱい何かを見て、経験してきているなというのがわかった。1年間、世界中を旅して、いろんな集落で一緒に住んだりしている。建築を知っているとか建築ができるという話はひとつもないんですが、純粋で素直な子だから、いいかなと(笑)。

——矢田さんはどういう思いで、竹原さんのところに……。

矢田 左官とか木とか石を知っていて、日本のよさをわかっている人から学びたいと思っていました。そうでないと僕が日本人である意味がない。それでいろんな人を探していて、竹原さんに行き当たったという感じで、重村先生に相談しました。
竹原 素材をどう扱えるかというのは、僕の師匠である石井修先生と出会ったときも同じでしたね。建築をここまで粘り強くやる人がいるのか、この人はすごい人だなあと思った。とくに石をこんなに使える人がいるのかと。自分でも石を勉強しましたが、石の図面を見るとうちのスタッフのものだとわかります。
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