特集3/対談

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クライアントに愛される家

——竹原さんに「ES house-02」の感想をうかがいます。

竹原義二 クライアントがとてもいいですよね。家を愛している。今日はすごく寒いけれど、朝ご主人とお会いして話をしても、そういう文句は言わない。この住宅は、家族の誰かが「寒くていやだ」とか言い出せば成り立たないですから。季節がめぐることを知っていて、住みこなされているんですね。僕の家(自邸「101番目の家」〈2002〉)も外部を取り込んでいるから、よくわかります。矢田君の「ES house-01」(05)は郊外に立つ平屋ですが、そのクライアントもオープンで、家を愛している方ですね。
 それから最近の若い建築家は内外を明快に仕切りますが、この家は建具で仕切られているからすごく曖昧。戸を開けないと、内か外かがはっきりしない。でもそういう仕切り方が、家の中に距離をつくって奥行き感を出している。
矢田朝士 最初は純粋に「隙間のあいたコンクリートの中に、透明な箱がふたつ」と考えて、簡単な動線だけを決めていました。住まい方を聞いているうちに、家族室1と外室のあいだはメインの出入り口だから開き戸、台所と通り庭のあいだはサブだから引き戸とか変わっていったんです。
竹原 外殻が鉄筋コンクリート造で中身が木造というのは「01」も同じだね。
矢田 RCは防水や仕上げも有利だし、外側の皮膜としてしっかり守れると、内側にやわらかい木を使いやすくなります。
竹原 両方を木造にすると、都市のなかでは防火の問題があるし、梁を通すとか構造的にも複雑になる。でもコストは有利だし、何重にも木のレイヤーがかかるから、また違う見え方をしておもしろいと思うな。それから、この家は子どもが成長していくにはいいけれど、終の住処として車いすを使うことも考えたらちょっと疑問もある。
矢田 僕は「まずクライアントさんありき。そして僕らがある」と、竹原さんから学んできました。だから自然を取り入れたいという僕の価値観と同時に、クライアントさんのもつ価値観を大事にして発展させていきたいと思います。
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