
東京近郊の丘陵地に広がる典型的な住宅地。東西に細長い敷地の両面に、「N邸」はじつに不思議で魅力的な姿を見せる。子どもが描く家型を忠実にトレースしたような矩勾配の三角屋根と、大きなサングラスでもかけたように少し張り出して左右にまわり込む窓。それはいわゆるデザイン住宅的なスタイルを誇示することなく、また斜線制限の影響を感じさせることもなく、ちんまりとかわいらしく立つ。
もともと建て売りを購入する予定だったクライアントからの設計依頼。「3階建て、100㎡、バルコニー付き」という要望には予算がきびしく、2階建てでロフトを設け、東西にバルコニー的な部屋をつくることを考えたそうだ。シンプルな素材や構成がコストダウンにつながっていることはいうまでもない。
2階の大きな開口部は、この住宅を最も強く印象づけている。高さ1500㎜の住宅用既製サッシが、外壁から100㎜だけ突き出して三方に連続し、その下に高さ800㎜の腰壁がある。外部を引き込んであふれる光と、足元を包むように守られる感じとのバランスが絶妙だ。サッシはこの見付け幅でつくることができる最大寸法。枠まわりを見ると、上框は塗り込んで壁に溶け込ませ、下框は小口を見せて窓台らしさを控えめに主張している。






