
現地を訪れる前から、その資料を見て「本当だろうか」と何度もつぶやいていた。一般に都市型住宅というものは、多数の条件や制約のもとに成立している。限りある面積と予算のなかでクライアントの快適な生活を得るため、設計者はさまざまな手法を駆使することが求められる。ところが「N邸」の構成は、そんな苦労をまったく感じさせないほどにシンプルなのである。眺望の開けた東側とアプローチのある西側とは、左右対称でまったく同じファサード。インテリアの壁や引き戸の位置もシンメトリー。エントランス(ルーム1)とベッドルーム(ルーム2)が同じ大きさ。2階の東西にあるリビングも同様。そんなことがありえるのか。しかし設計者のふたりに案内されるうち、その意味がわかってきた。






