パズルのごとく緻密に快適さを検証

 標準のスイートルームは広さ約10㎡。さすがに通常のホテルと比べると広いとはいえないが、シングルのソファベッドを2台設置し、昼はリビング、夜は寝室として使い分けられるうえ、ヴォールト天井が広がりを感じさせ、扉をガラスの格子戸にすることで圧迫感を軽減している。ガラス扉はカーテンで閉じられるが、日中は開け放てば、格子越しに通路側の窓の外の景色を楽しむこともできる。
 注目の水まわりは、全室に専用シャワールームとトイレを備えている。シャワーブースの壁は新歌舞伎座で使用されているものと同材というヒノキ張りで、一流ホテルと同等のオバーヘッドシャワー付き。
 これまでひとり何分以内といった時間制限付きで共用のシャワールームを設けた列車はあったが、ななつ星のシャワールームは全室完備というだけでなく、潤沢にお湯が使える点が特筆に値する。
「ひとりあたり最長30分使っても欠水しないだけの水を積んでいます。給水タンクだけでなく排水タンクも同じ容量だけいりますから、床下はタンクのお化けです(笑)」と香月さん。
 2日目の旅館宿泊のあいだに、給水タンクの補充や汚水の排出を行うという。
 しかも、オーバーヘッドシャワーから最初に冷水が出ないよう、止水後の残り水を壁裏の配管から床下に逃がす仕組みまで備わっている。
「あの狭い空間では逃げようがないですから、最初に頭上から冷水が出るのはなんとしても避けたかった。TOTOさんにご無理をお願いして、みごとに実現しました」
 また、スイートルームの1室は車いすやオストメイトに対応し、シャワーブースもシャワーカーテンで囲むオープンなつくり。香月さんいわく、「実際には車いすやオストメイトを利用しない方も宿泊するので、デザインと機能を両立させるのが難しかったですね」。オストメイト用の水栓を壁面収納内に設置し、トイレの手すりも木製で違和感がないデザインにするなど、さりげない工夫が見られる。


>> 「ななつ星in九州」のCRUISE TRAIN“ SEVEN STARS” IN KYUSHU車両平面図を見る

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