特集3/ケーススタディ

どのように、シェアするのか

「SHAREyaraicho」は、7畳ほどの各個室と、共用の作業場、トイレ、バスルーム、コモンキッチン、コモンテラス、広間から成り立っている。個室内に水まわりはない。共同生活をするうえで、こうした共用部分の利用にはいくつかの規則があるだろうと予想していたが、運営者によれば「臨機応変に意思疎通をしていますから、ルールはほとんどありません。たとえば、週末にコモンキッチンで料理をつくって、ちょっとしたパーティをすることもありますが、もちろん任意参加です。ただ、唯一決めているルールが、22時以降は騒がない、ということ。これは居住者同士というよりは、近隣住民の方々を意識してのことです」とのこと。確かに、決まりごとを知らせるような、掲示板や張り紙もなかった。住民同士の意思疎通がしっかりしていれば、細かな規則を決めていかなくても、共同生活を送れるということなのかもしれない。ただ、規則はなくても、その代わりに運営者の負担はそれなりにあるという。居住者全員がまったく平等に、合議制で日々の事柄を決めていたのでは、うまくいかない。そうしたときに運営者の声が必要にならざるをえないので、外出先でも携帯電話からのLINEによる居住者とのやりとりが、運営上、欠かせないという。
「現状では問題はないが、住みつづけるうちに、もしかしたらルールづくりも必要になってくるかもしれない」というのが現実のようだ。それに対し、篠原さんは「住み手でもある運営者の負担が大きくなりすぎる場合、ある程度の管理を外部のオペレーションに任せるということも、シェアハウスの選択のひとつ」と、シェアハウスの運営方法の多様性を語る。
 また、シェアハウスの運営の実態として、篠原さんは緊急時の問題を述べている。「家族であれば、緊急時に部屋に入ることはできるが、他人の場合には難しいこともある。たとえば、防災目的などの理由があれば個室に入ってよいといった了解を、あらかじめ得ておくことが必要」と、法律や契約のないシェアハウスだからこそ、確認しておかなければならないことがあるという。
 シェアハウスの実態は、住み手によって大きく変わるうえに、その運営方法もまだ手探りの部分もあるが、それは、次世代の住み方として、期待の込められた模索だと感じた。この模索はまとめるよりもむしろ拡散させたほうが、新たな集住の形の可能性を広げるのではないだろうか。
 2013年9月6日付で、国土交通省から「違法貸しルーム対策に関する通知について」が出された。この通知の意図は、いわゆる「脱法ハウス」の取り締まりだが、併せてシェアハウスも、建築基準法上、「寄宿舎」の用途に該当されることとなっている。この通知に準拠すると、シェアハウスは窓先空地を設けるなど、既存の「寄宿舎」の用途に沿って設計せざるをえなくなる。しかし、上記のような、さまざまな可能性を模索している段階のシェアハウスにおいては、もう少し多様な展開が認められるべきだと思う。篠原さんによると、シェアハウスも含めた「特殊住宅」などといった多様性を認める用途の法整備が、今後は必要になる、という専門家の見解もあるそうだ。


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