特集4/ケーススタディ

多面性と多義性の
包容と受容

「開放的な明るい場」と「閉鎖的な守られた場」を単純に分け、単純に足し合わせることもできる。そうしたほうが主題が表現にストレートに結びつき、いわば一発芸のような明快さをもたらし、他者からの理解を容易にすることだろう。
 あるいは、二間四方の空間単位を矢車状に配置するシステムにしても、それをより直接的に外部や内部に表す方法はあるだろうし、むしろそのほうが常道かもしれない。そうすれば主題が一見して明らかで、設計者の意図があらわになるにちがいない。
 けれども、横内さんはそうした道を選ばない。
 すべての物事や現象には多面性があり、多義性が備わっている。近代の理性によれば一面を捨象してほかの一面に焦点を絞ることも、多義性のなかに鮮明な強弱をつけることも可能だろうし、それが合理化の道であるにちがいない。
 しかし、横内さんはあえてそうしない。
 多面性をすべて包み込み、多義性をそのままに受容することを旨として、建築を立ち上げ、場を築いていく。それによって表現の鋭角性が和らぐことがあってもいとわないし、形態のあいまい性が強まることがあってもかまわない。それが自然の摂理に沿うものだからである。「ヒメシャラの森の家」は、横内さんのそうした姿勢をよく示している。

>>「ヒメヒャラの森の家」の1F平面図を見る
>>「ヒメヒャラの森の家」の2F平面図を見る
>>「ヒメヒャラの森の家」の断面図を見る
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Movie 「ヒメヒャラの森」

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