特集4/ケーススタディ

「縄文人になりたい」

「縄文人になりたい」と横内さんは言う。「ヒメシャラの森の家」の外装を杉皮張りとし、まるで蓑虫のような表情をつくり出しているのも、そのあこがれの表れだろう。
 独立後のキャリアのスタート地点が現代数寄屋の最高峰というべきフィールドだった。そこはあたかも底なし沼のように、長い歴史に裏づけされた技法が山のように堆積し、明文化されていないが守るべきとされる伝承が重なっている。その良質な部分に触れ、身につけることはよいとして、沼地に足をとられたくはないと彼は言う。そこにとどまっては現代の建築家として世の一般の要求にはこたえられないし、慣習的な技法をいくら洗練させたとしても一定の枠は超えられないという想いがあるからだろう。
 そこからスタートして独自の境地に至った横内さんは、近年、さらに進んで、理性的な判断でとらえられる状況を超えた地点に向かいたいという欲求を強くもっているという。そのよりどころは縄文。プリミティブな衝動のストレートな表現、得体の知れない野放図な生命力、圧倒的な包容力とやさしさ。そうしたあり方に強烈にひきつけられるという。
 繊細にして高度な技を知りつくしながら、それでもなお、小手先の技は通用しない、原始のエネルギーが渦巻く縄文への傾倒を隠さない建築家。その行く末に興趣はつきないが、「言うことは簡単でも、やるのは難しいんだよね」と当の本人は笑っていなすのだった。

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Movie 「ヒメヒャラの森」

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