特集4/ケーススタディ

開放と閉鎖の
組み合わせ

 この計画の眼目は、「開放的な明るい場」と「閉鎖的な守られた場」の組み合わせだった。1階でいえば、南東の3つの空間単位が前者にあたり、北西側の3つの空間単位が後者にあたる。その区分は開口部の大きさ、天井の高さ、仕上げ、建具など、各所に表れていて明瞭、紛れがない。
 残るひとつの空間単位が中央の「居間」である。この空間こそがあらゆる意味で「ヒメシャラの森の家」の核心である。
 それは「開放的な明るい場」と「閉鎖的な守られた場」の結節点にあって、両者の対比的な特質をともに備えながら、しかしあいまいではなく、固有の空間の質を保っている。それは空間単位のなかで唯一、外気に直接面しておらず、機能、レベル、天井高、仕上げ、すべてが異なる空間に四方を囲まれていながら、四方のいずれとも通じている。
 隣り合う広間から1m以上も低い2.31mの天井高、コーナーをまわる座の低いソファ、そして四方と通じる開き戸、折り戸、引き戸と勝手も大きさも異なる5種類の建具。そのどれかひとつがわずかに狂っても破調につながりかねない危うさをはらんでいるところを、設計者はみごとに調停し、このうえなく居心地のよい場所に仕立てあげている。
 私たちが訪れたのは真夏の昼下がり。この居間は、きらきらと陽光を跳ね返すあふれるような緑の眺望がありながら、一方では深く静かに沈潜する闇であることをやめない不思議な空間となっていた。冬は冬で、凍える外景を遠望する究極のぬくもりの場に変貌するのだろう。

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Movie 「ヒメヒャラの森」

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