特集2/ケーススタディ

陰で支える技術

 さらに表から見えないところに秘めた技術が、日々の暮らしを支えているのも見逃せない。
 まず掃き出し窓は、既存部と同様の繊細な木製建具だが、ガラス戸と障子のあいだに内雨戸を入れた。断熱と防犯の役割をはたすとともに、高齢の夫妻が毎日の開け閉てに際しガラス戸を動かさずにすむ。
 そして前述のようにダイニングキッチンは下屋となっているため、床レベルは既存部より下がり、床下は地面から15㎝くらいしかとれない。そこで床下全体を掘り下げ、新たな柱を立てたうえで通気性を確保している。
 またここでは掃き出し窓の下枠や桁の裏側に、9㎜厚の鉄板をネジ留めして構造的な強度を補っている。伝統的な工法だけでは、とくに茶室などは華奢なため台風が来れば傷んでしまう。この補強は多くの建築家と仕事をしてきた中村外二氏からのアドバイスだという。それに加えて、ネジ留めは茶室などを移築するときに解体しやすいという利点もあるそうだ。きわめて今日的でサステイナブルな発想ではないか。


>> 「若王子の家」の平面図を見る
>> 「若王子の家」の断面図を見る

  • 前へ
  • 9/10
  • →
  • Drawing
  • Profile
  • Data

TOTO通信WEB版が新しくなりました
リニューアルページはこちら