特集2/ケーススタディ

対立と矛盾から
新しい秩序へ

 こうした増改築には、古いものにまったく新しいものを対比的に加える方法と、また一方で保存再生のように完全な数寄屋建築をつくる方法とがある。矛盾する対比的な価値観や美意識について、どちらかにシフトしてしまえば、設計の立ち位置は明快になり、表現も先鋭になる。しかしここではその両方を飲み込んで、自分のなかで消化するしかなかったと横内さんは言う。
 その好例として前川國男の「自邸」(42)を挙げる。伝統的な日本建築の大屋根の形と、ル・コルビュジエから学んだ西洋的なプランニングとが、一軒の家で両立している。単純明快なものだけが美しいとは限らない。

「対立した概念や矛盾した概念を足し合わせて、新しい秩序をつくる。それが日本文化であり、本来の和の建築の姿勢です」

 伝統と現代、西洋と日本、数寄屋の世界と日常の生活、畳座といす座……。この住宅ではさまざまな対極的な価値観が凝縮され、深く考察されている。横内さんがつくっていく数々の作品の萌芽がここに見出せるのだ。


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