
ふたつの大胆な試み
この住宅に快適さをもたらしている新たな要素として、トップライトとオープンアイランド型キッチンのふたつを取り上げよう。
ダイニングキッチンの面積からすると、一畳大のトップライトは相当に大きい。しかしそれによって北向きの部屋の暗さや天井の圧迫感が解消され、ガラス越しに裏の楓を望む視線を得ている。また庭を背に主人が座ると一般には顔が影となるが、トップライトの光はその見栄えをよくしてくれる。夜間には障子が引き出され、落ち着いた室内をつくる。
キッチンは当時としては珍しい完全なオープンアイランド型で、フラットなカウンターとしている。これは、大勢のときにはみんなで台所を使いたいという建主の希望にこたえたもの。そこで困ったのは、洗ったものをどこに置くかという水切りの問題だった。ここでは44㎜厚の黒御影石の天板を削り込んでスノコを置き、下に落ちた水を勾配によりシンクに流している。また左右に配した水切りとまな板はふたつずつを同じサイズにすることで、ひと組を入れ替えればふたりで包丁が使える。水栓も同じものをふたつ並べた。
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