特集2/ケーススタディ

京都の庭から
学ぶこと

 古い建物を見歩くうち、奈良に比べると京都の建築は印象が弱いと横内さんは感じはじめる。そして同時に、京都の庭のすばらしさに気づく。日本建築は庭の一部としてつくられ、両者は一体になっている。日本人にはもともと自然を恵みとして受け取る価値観があり、京都はそうした庭の文化が受け継がれている風土だと知る。
 ここでもまた出会いがあった。庭師の明貫厚(あけぬきあつし)氏。その自由な発想や、「庭は哲学的であり、建築よりも語りかけてくる」という考え方は、「若王子の家」の斬新な庭づくりを後押ししていく。
 椅子と机の空間から見える北庭は、日本庭園とは違うはずだと横内さんは考えた。もともと藪で真っ暗だったところを、山の斜面の雑木をすべて切り、裏の楓の林だけを残す。そして、日本固有種である這寒椿の大刈込み。可憐な花の赤、深みのある葉の緑が、室内と一体化したみごとな庭となった。


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