特集2/ケーススタディ

若王子の
主屋から
学ぶこと

 さてその主屋を細かに実測すると、茶人による家は多くのこだわりに満ちていることを発見する。構造はごく華奢な木造で、西洋建築のような物質的な永遠性はまったくない。しかし空間に込められた愛情が、150年にわたって住み継がれる建築を生んでいる。
 その具体的な魅力に、まずアプローチを挙げてくれた。すべてが微妙に曲がっていて、まっすぐなところはない。そして通路から玄関、「一畳の間」、茶室への露地あたりを、5m角ほどのなかに納めた空間密度の高さ。また「一畳の間」には四分の三の台目畳が敷かれ、ひとりでお茶を点ててそれを飲み、軸と向き合い瞑想したことが想像される。決まりごとの多い現在の茶室に対し、もっと自由にものがつくれた時代だったという。
 そのこぢんまりとしたスケール感は、ダイニングキッチンにも生かされた。既存の瓦屋根をいじらず、下屋を葺き下ろして増築し、天井を低く押さえる。テーブルの天板などすべてを小ぶりにつくることで、身体に心地よい空間を得ている。


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