特集/ケーススタディ3

すべての光をトップライトから

「グリーンボックス♯1」もシリーズの常法を踏襲し、外観は総2階建ての「箱」である。張りまわされた南京下見板は、繊細な日陰のストライプを壁面につくる。同じ仕上げを施した外階段は、建物本体から分節してデザインされ、さりげなくそこに寄り添っている。
 しかしそのコンセプトは、外観からは想像もつかないほどに過激なものだ。基本的に窓をつくらず、寄棟屋根の四隅に設けたトップライトから採光を得る。7.2m×6.3mの平面に対して、それぞれ1.8m角のトップライトだから、かなりの大きさといえる。そして2階のパブリックゾーンを満たした光を、各トップライトの直下に置かれた吹抜けにより、1階のプライベートゾーンへ届けるという仕掛けだ。正確には、ひとつは2階玄関、ひとつは階段室を照らし、残りのふたつが、居間.食堂に設けた吹抜けから寝室と子ども室に光を落とす。
 その原型は72年の『新しい住宅』(実業之日本社)の標準住宅計画案で、周囲から切り離されたシェルターとしての意識が高い。確かにプロトタイプを思わせる割り切り方といえよう。
 宮脇自身もこうした手法を「ウルトラC級のアクロバット」と称する。もともと「ウルトラC」とは、64年の東京オリンピックで体操競技の日本チームが生み出した、C難度以上の技を指す。しかし体操競技にしても、その難度は今やGまたはHにまで拡大してしまった。宮脇が、それが「ルーティン化して、その後反復使用されること」を嘆いたのも無理からぬところで、雑誌発表の文章タイトルは「悪条件処理士」となっている。
 それでも、現在に至る建築家、ハウスメーカー、工務店、そして建主らが開発していった数々の手法は、彼の想像を超えていたように思える。半地下をつくって容積率をかせぐ、壁や床を限りなく薄くする、なかには、天井高1.4m以下のロフトを事実上の寝室や書斎に使っている例さえあるのだ。


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